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心理学ワールド 91号 心理学ライフ 舞踊と私 山本 絵里子(相模女子大学) | 日本心理学会

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Academic year: 2021

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44  私は舞踊に関する発達研究の傍 ら,「創作舞踊」にも挑戦してい ます。「研究」と「教育」と「創 作」はかけ離れたことのようにも 思いますが,私にとってこれらは 密接に結びついています。 「舞踊」との出会い  私と舞踊との出会いは幼少期に 遡ります。5歳の頃,初めて見た 舞踊。舞台上で踊り手が音楽に合 わせ感情を表現しながら舞い踊る 姿を目の当たりにし,煌びやかな 世界,しなやかな身体運動,そし て情緒溢れる表現力に目を奪われ たことを昨日のことのように思い 出します。私は幸運なことに,舞 踊をあらゆる側面から学び,触れ る機会に恵まれました。その一つ に,小学校時代の「創作舞踊」が あります。舞踊を専門とする体育 の先生と共に,子どもたちが自ら 様々な動きを組み合わせることで 舞踊を創作していく授業です。こ の授業で,私は心臓の収縮と拡大 の規則性を表現した『鼓動』とい う舞踊の創作に携わりました。創 作過程における胸の高鳴りと喜び は,私を舞踊の世界へと瞬く間に 魅了していきました。このような 幼少期における舞踊との出会いと 経験が,舞踊への好奇心へと変化 を遂げ,今日における私の舞踊に 関する研究の礎となっています。 赤ちゃんのおどりの研究  私が研究者として歩み始めた 頃,すでに私の中では「心理学」 と「舞踊」の繋がりを意識してい ました。当初は,舞踊への興味か ら,「舞踊」を観る人の「こころ」 の仕組みを知りたいと思っていた のですが,その後,発達研究に従 事し,赤ちゃんの不思議な身体運 動に出会うことになります。赤 ちゃんは,大人とのコミュニケー ションの中で,手や足をリズミカ ルに動かします。また,赤ちゃん は座った状態で上手に身体を弾ま せたり揺らしたりします。私は, 様々な動きを生み出す赤ちゃんの 能力に驚かされるとともに,その 素朴な動きに魅せられていました (図1)。研究を進めていく中で, 赤ちゃんが周囲の大人たちの会話 や身体運動に合わせて手や足を動 かしていることを知りました。大 人たちは,このような身体運動を 「上手におどっている」や「かわ いいおどり」と表現します。そ うです,赤ちゃんはおどりを創作 し,それを表現していたのです。 赤ちゃんのこの不思議な身体運動 について知れば知るほど,小さな 子どもたちのおどりには,舞踊を 理解するためのたくさんの手がか りが秘められているように思いま す。こうして,私は「赤ちゃんの おどり」を研究対象として捉える ようになりました。 研究,教育,そして創作  小さな子どもたちのおどりに関 する研究は,私にある一つの思い をもたらしました。研究を通して 出会う赤ちゃんや子どもたちが 生み出す,多種多様な動きを目の 当たりにするうちに,自らの中に 眠っていた創作舞踊への思いが再 び込み上げてきたのです。すぐに 邦 くに 正 まさ 美み創作舞踊研究所の門を叩き ました。ここは,舞踊を学んでき た人もそうではない人も創作舞踊 を学ぶことができる日本では数少 ない場です。研究所では,創作舞 踊を「運動による空間形成の芸 術」と位置づけています。そし て,自らの身体運動を通して,舞 踊的(踊ることのできる)身体を 作るための舞踊身体育成法,舞踊 を創作するための空間形成法,舞 踊理論,そして即興と創作といっ た創作舞踊の基本を体系的に学ぶ ことができます。  私は,今,再び,舞踊を創ること の楽しさを追求しています。自分 の思いや感情を踊りとして創り上 げるその情熱と喜びは,小学校時 代に感じたあの胸の高鳴りの延長 線上にあり,どうやら私の心の中 で,この思いは不変のようです。  今後,心理学と舞踊の二つの領 域を行き来しながら,それらの領 域の知識を深め繋げ,研究と教育 に邁進していきたいと思います。  研究,教育,そして創作という 私の中に溢れる情熱と喜びを加え ながら。

舞踊と私

相模女子大学人間社会学部人間心理学科 講師

山本絵里子

(やまもと えりこ) Profile─ 2008年,慶應義塾大学大学院社会学研究科心理学専攻博士 課程単位取得退学。博士(心理学)。2020年より現職。専門 は発達認知科学。慶應義塾大学大学院社会学研究科訪問研 究員。 図 1 小さな子どものおどり  (腕をふわふわと動かしている)

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